なぜ環境を守る?環境経済学の考え方を紹介!
こんにちは、こんばんは!
今回は環境問題を取り上げていこうと思います。
環境問題というと、水俣病や四日市ぜんそくのような公害であったり、地球温暖化のような大規模なものであったり様々なのですが、ここでは環境という言葉を「人間が健康で快適に暮らせるための環境」という意味で使っていきます。
(人間本位の少々身勝手な視点だとは思いますが、例えば植物目線で議論を進めてもあまり得るものは無いと思うのでこれでいきます)
サミットなどでも度々議論されるように、世界的に危機感をもって対策を進めるべきだとされている環境問題ですが、そもそもなぜ環境を守る必要があるのでしょうか?
まずはそこから整理していきましょう!
《なぜ環境を守るのか》
・自然資源の利用
例えば木を切って材木にしたり、農作物を食べたりといったことは日常的に行われています。
このような活動がなくなってしまえば困るというのは当たり前です。
基本的にこのような自然資源は植林する、手入れをするといった形で繰り返し再生産ができるものですが、自然の再生産スピードを越えて人間が利用しているので環境破壊が起こっているというのが現状です。
・汚染の吸収・浄化
例えば僕が少しくらい水や大気を汚したとしても、時間の経過とともに汚れは拡散、希釈し、全く気にならないレベルになるはずです。
また植物や微生物などの働きによってある程度の汚染は吸収されます。
多少の汚染であれば、環境は自動修復するものです。
しかし今はその修復能力を超えて人間が汚染物質を排出しているので、環境破壊が進んでいると考えられます。
・アメニティの供給
アメニティとは、心地よさや快適さといった意味です。
自然風景を見て綺麗だな、森林浴をして落ち着くな、といった感覚を指して言います。
これがなくなってすぐにどうこうといった問題は無いのかもしれませんが、長期的に考えればアメニティの無い世界というのは生きにくいでしょうし、実際に精神的な問題を引き起こす可能性もあります。
(ナチュラルセラピーというものもあるように、自然が人間に与えてくれる力は舐めたもんじゃないと思います)
・生命維持に必要
これが一番重大な問題なのですが、清潔な水や空気が手に入らなくなったら当然人間は生きていけません。
公害問題などで明らかになったように、環境破壊は直接的に人間社会の破綻と繋がっているのです。
大きく4つの観点を挙げましたが、どれも大切なことですし、環境を守ることの必要性は理解していただけたかと思います。
《なぜ環境破壊が進む?》
そんなに大事なら守ればいいじゃんという話ですが、そんな簡単なことではありません。
環境を守ろう運動みたいなものが悉く失敗に終わっているという事実からわかる通り、人々の善意や優しさに訴えかける取り組みはあまり効果がありません。
経済活動によって短期的に利益をあげることを考えれば、環境問題を無視して乱開発をするのが効率がいいからです。
長期的に考えれば、人間社会自体が破綻してしまっては意味がないのですが、そう差し迫った問題でもないので無視されてしまいます。
(地球温暖化が少し進行したからといってすぐに死ぬ訳ではないですよね)
経済学的に言えば、環境を守るインセンティブが弱い。
環境に悪いことをしたからといって特に損をすることもないし、積極的に保護に取り組んでも特に得をするということもないのです。
(近年では法的な規制や国際的な削減目標があるので、極端に悪いことをすれば自分が損をするのですが、一昔前はそういったものも無かったのでみんなが好き勝手していました。だからこそ公害問題が裁判にまでなったのです)
環境を守るインセンティブが弱い大きな理由の一つは、環境に価格がついていないということです。
特に日本に住んでいると、清潔な水や空気は無料で無限に手に入るような感覚になってしまいます。
価格がないことから、市場で取引されることもなく、従って需要と供給の市場メカニズムによって均衡取引量に落ち着くということもないので、どうしても過剰利用してしまいがちです。
環境破壊による金銭的、経済的な損失があまりないので過剰利用してしまうというのが経済学の見方です。
じゃあ価格をつければいいという話なのですが、そううまくはいきません。
経済財として市場で取引されるためには、「競合性」と「排除性」が必要だと言われています。
競合性とは、ある人が財を手に入れたら他の人は手に入れられないということ、
排除性とは、お金を払っていない人は利用できないということです。
普通の財、例えばコーラであれば、僕がある店でコーラを買い占めれば他の人は買えなくなります。(競合性がある)
また、お金を払う気の無い人が「一本ちょうだいや」と言ってきても僕にはそれを断る権利があります。(排除性がある)
このような状況でこそ需要と供給が釣り合って適切な価格と取引量が実現されるのです。(市場メカニズムが機能する)
一方環境はどうでしょうか。
例えば空気で考えてみましょう。
僕がいっぱい空気を吸ったからと言って周りの人は息ができなくなるということはありません。(競合性がない)。
また、「僕は税金をいっぱい払っているからいっぱい空気を吸っていい」というものでもなければ、「お前はお金払ってないから呼吸するな」というものでもありません。(排除性がない)
このように競合性も排除性もない財(公共財と言われています)の場合は市場メカニズムが働かず、適切な利用・配分ができないので、結果的に過剰に使ってしまって環境破壊が起こります。
しかし無料だからといって環境に価値がないかというとそんなことはないというのは上で確認した通りです。
(むしろ積極的に価値を与えなければならない)
そこで環境経済学では、「価格を持たない価値物」である環境に価格をつけ、短期的・金銭的な価値だけでなく長期的・社会的にベストと思われる配分を実現するために、人々にインセンティブを与えるための学問です。
近年、国内外でどのような取り組みが行われているのかを次の記事で見ていきましょう。
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